イタリアの櫻子たち Sienaから 

4月6日、真っ青な空が広がる快晴の土曜日、トスカーナ州の古都シエナに到着しました。

 

Siena, Piazza del campo

Siena Stazioneに到着すると、シエナ市在住でシエナの櫻子たちを土地で見守って下さっているBenitoさんが、まっ赤なFIATに乗って到着を待っていて下さいました。

Benitoさんは、シエナにあった料理学校の運転手として長年働かれており、その学校にはたくさんの日本人が生徒として通っていました。
車の中でBenitoさんに見せて頂いたアルバムには、数えきれない程の日本人との写真が大切にしまわれていました。
日本が大好きだとおっしゃるBenitoさんとともに、櫻たちが植樹されているシエナ市立公園に向かいます。

駅から来るまで10分もしないうちに、たくさんの子供たちが楽しそうに声を上げて遊んでいる広く美しい公園に到着しました。
公園は広大な斜面にそって作られており、その見晴らしのよい一番高いところに、60本の櫻たちがしっかりと、静かに整列して、根付いていました。

公園に植樹された60本の櫻たち

Benitoさんと櫻たち

シエナ市が作って下さった、櫻の記念プレート
”生まれたすべての子供たちへの 木” と名付けられています。
2007年にイタリアに送られたことを記念しています。

まだ子供であるこの櫻たちが、数十年後、日本の櫻のようにしっかりと土地に根を張って大きくなり、そして毎年訪れる春に豊かに花開き、公園で遊ぶ子供たちを優しく包みこむ姿が、脳裏に浮かびました。

木は、ゆっくりと、しかし着実に土地の栄養を身体にしみ込ませながら、しっかりと成長していきます。
シエナという土地と、その土地の人々にこれからたくさん触れ合い、成長する事で、いつか日本の櫻の木々が花をさかせて、イタリアの人々に喜びを与えてくれる木々になってほしいと思いました。

Sienaの櫻子たちに会った後、私はBenito家の長い長い昼食にお招きいただきました。全て手作りの、パエリエ、pesce(魚)のトマト煮込み、レンズ豆の煮込み、そして最後はエスプレッソのジェラート。どれも愛情が込められて作られており、大変な美味でした。
更には、食後は消化のためにということで、これまた手作りのcaffe入のグラッパ、オレンジのラキなどを頂き、イタリアの家族の長く豊かな食卓を体験させて頂きました。
終始食事の間は、Benito夫妻は日本にいらしたときの思い出を語って下さりました。 日本の食事、着物、寺や神社などに訪れたときの感動を、今でも忘れる事が出来ないと語って下さり、大変嬉しい思いでした。


イタリア人は、家族を大事にすると、どこでも耳にします。日本では、大都市で一人暮らしをする人が何年間も故郷に帰れないことがあると話すと、全く信じられない、と驚かれます。どうして帰らないのか、と。
楽しい時間をともに、長く共有することが家族の絆を深めることであり、またそれこそが家族であるならば、”共に食べる”という時間は、生活の中でももっとも重要な時間です。その時間を長く、豊かに取るイタリアにおいて、家族が強い絆で結ばれるのは自然なことだと思えました。

シエナ市の櫻が大きくなったら、木の下で、花を見ながら食事をしたいですね、と話しながらBenitoさんとお別れをしました。

Benitoさんの家に植えられた、櫻の木

Benitoさん、Sienaの櫻子たちを案内して下さり、また豊かな時間を共に過ごさせて頂きまして、本当にありがとうございました。これから、Sienaの櫻たちが成長して行くことが楽しみです。
沢辺


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